黒田辰秋|木と漆と螺鈿の旅

黒田辰秋|木と漆と螺鈿の旅

豊田市美術館で開催されている
「生誕120年 人間国宝 黒田辰秋 ー木と漆と螺鈿の旅ー」
に行きました。

素晴らしい作品を鑑賞できて
とても嬉しかったので、少しご紹介したいと思います。

黒田辰秋(KURODA TATSUAKI)とは・・・
1904年(明治37年)、京都に生まれ、京都を拠点に活躍し
1970年(昭和45年)、木工芸の技術としては初めて重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された
日本を代表する木漆工芸家です。

そもそも辰秋の父親がなぜ京都で塗師屋を営んでいたのかというと、
父親は加賀に生まれましたが、幼いときに山中の黒田家の養子になったんですね。
そして山中塗を習得後、京都に出て塗師になった人物なんだそうです。

実家は塗師屋でしたが、辰秋は体が弱かったため、
後継として期待されていたわけではなかったようです。

蒔絵師として住み込みの弟子になりましたが、体調不良のために二ヶ月で実家に戻ったりする。
それがきっかけで独学の道を歩み始めることになるのですが、
素地から加飾まで一貫制作するスタイルになったのには
父の想いを受けてのことでもあったようです。

さて、展覧会の中では渦巻きを思わせる作品たちが印象的でした。

赤漆流稜文飾手筺
昭和30年代前半(1955−59) 51ー55歳ごろ
拭漆流稜文手筥
昭和33(1958)年 54歳ごろ
耀貝白蝶貝螺鈿細流卍文飾箱
昭和45(1970)年 66歳ごろ

どれも圧倒的で力強く、どっしり安定感のある造形です。
曲線や丸みを帯びた量感のある形。

木工を独学でここまで極めるなんて、すでに次元が違う。
継手はどうなっているの?
拭漆は何度も何度も重ねたんだろうか?
螺鈿を貼るときは、きっと息を止めていたに違いない。
直接、本人に聞けたらどんなにいいだろう。

ちなみにこれらの不思議な文様は卍を発展させたもの。
朝鮮王朝時代の家具に用いられていた文様を拝借し、
独自の解釈でその構造を読み解きました。

アクセス

会期は【2025年5月18日まで】。
場所は豊田市美術館。
名鉄「豊田市駅」、または愛知環状鉄道「新豊田駅」から徒歩でアクセスできます。
ゴールデンウィークのお出かけにもぴったりです。

私の一番のお気に入りはこれ。

螺鈿梅合子
昭和17(1942)年 38歳ごろ

6センチ四方ほどの、小ぶりで愛らしい合子でした。